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オスラー病に関する国内外の文献紹介

combathht1.exblog.jp

オスラー病に関する最新の重要論文や患者さんに有益なものを取り上げます。論文は必ずしも正しいものばかりではなく、解釈には注意が必要です。

Hereditary hemorrhagic telangiectasia: how to efficiently detect hepatic abnormalities using ultrasonography. Journal of Medical Ultrasonics (2020) 47:421433

秋田県横手市民病院、日赤、岩手医大、北海道名寄市民病院、日本大学病院からのレビュー

目的:肝血管奇形の超音波診断・スクリーニング法についての総説


Hepatic involvement

More often in HHT2 thanHHT1

80% of HHT

1) Vascular shunt

AV: HOHF

AP: Portal Hypertension

PV: Hepatic encephalopathy

VV:

Aneurysm:

2) Cholangiopathy

3) Focal lesions





Buscarinis US grading of HVMs (DOI:10.1007/s00261-018-1671-4)

肝血管奇形の超音波診断・スクリーニング法について_a0385263_19261879.png

HVMsを見逃さないために

1)Extrahepatic Artery Dilatation: >5-6m(正常5mm未満、splenic arteryと同サイズ)

transverse viewにてceliac truncから分岐する”wings of a seagull appearanceを描出しsplenic A.common hepatic A.を比較

a) HVMs HV9mm, SV3mm(b) Normal HV3mm, SV3mm

肝血管奇形の超音波診断・スクリーニング法について_a0385263_19013359.jpg

2)HA flow: >100cm/s, turbulent, perivascular color spots (perivascular tissue vibration by high flow

a) A very high-pulsed flow (maximal velocity:300 cm/s, resistance index: 0.7) with marked turbulence (small arrows).

b) Innumerous small color spots (arrowheads)in the soft tissue around the hepatic artery.

c) A perivascular color spot shows a pulsatile pattern with symmetric frequency shift above and below the baseline

肝血管奇形の超音波診断・スクリーニング法について_a0385263_19014345.jpg

3)Intrahepatic artery dilatation:肝内肝動脈は門脈と並走、正常では観察困難。拡張動脈は門脈に並走する屈曲した動脈としてカラードップラーで容易に描出可能

)Shunt:拡張したHAを末梢に向かってたどる

APS: HAに並走するPVとのcommunication pointと逆方向のPV血流を確認(power modeは×)

AVS: HVHAから離れて走行するため、shunt pointの確認は容易。Mild ではflowの確認が難しい。高度ではHV血流の動脈化を来す。


a) APS: Two vessels running parallel in the opposite direction, The HA in the normal direction (black asterisk) and the PV in the reversed direction (white asterisk).

b) FFT analysis of the two vessels. The one to be normal directional pulsatile hepatic arterial flow (straight arrow), The other to be reversed portal flow(curved arrow).

c) HV: A markedly high-velocity flow (arterialization)

肝血管奇形の超音波診断・スクリーニング法について_a0385263_19015399.jpg

5Ischemiccholangiopathy, biliary necrosis, chronic cholangitis, liver abscess ~blood stealing from the peribiliary plexus through intrahepatic AVS


6Focal lesions: focal nodular hyperplasia-like lesions (FNH), hemangioma

CEUS (contrast enhanced US): spoke-wheel appearance in early arterial phase and isoenhancement in later phases in FNH and slow fill-in enhancement in hemangioma. Superb microvascular imaging(SMI) is useful for visualization of small slow-velocity flows


a) liver abscess (an ill-margined hypoechoic mass)

b) FNH in hepatic periphery (a small isoechoic mass)

c) SMI of FNH (a clear spoke-wheel appearance)

d,e) Hepatic Aneurysm in color Doppler US and CT

肝血管奇形の超音波診断・スクリーニング法について_a0385263_19015653.jpg


Follow-up US

HVMsが問題となるのは40-50才頃から。従って、HHT患者あるいは遺伝子検査で否定されていない血縁者はその年齢からのannual USが望ましい

HVMs gradingによるUSフォローの提案

 Grade 0-15年に1回 

 Grade 2-32年に1回 

 Grade 4:毎年


(臨床的意義と患者さんへ)

HHT患者の8割にも及ぶ肝VMsは、多くが無症候であるがゆえに、特殊な病態(心不全、肺高血圧、胆道障害、肝不全等)を示さない限りあまり重要視されていない。一方、頻度の高い病変であるため、著者らは診断的有用性を強調している。日本では検診項目に腹部エコーが含まれていることも多く、腹部超音波検査に携わる医師・検査技師の間の認知が早期診断に有用であると思われる。また、遺伝子検査が制限される中において、肝臓病変の存在は診断上重要である。HHT家系の臨床的スクリーニングの観点から、非侵襲的な腹部エコーはこれまで以上に重視しても良いであろう。また、より高頻度で重症例が多いHHTタイプ2、積極的な検査が望まれる。より早期の病変検出のため、高周波プローブエコーによる肝表面の観察も推奨したい。また、明らかな肝臓病変を有するHHTでは、心エコーとBNPのチェックは必須であることは言うまでもない。


# by shijimi5512 | 2021-05-19 11:48 | Clinical(患者メッセージあり)
論文:European Reference Network for Rare Vascular Diseases (VASCERN) position statement on cerebral screening in adults and children with hereditary haemorrhagic telangiectasia (HHT)
Eker et al. Orphanet Journal of Rare Diseases (2020) 15:165
https://doi.org/10.1186/s13023-020-01386-9

目的:
CVMs screeningに関するevidenceは十分でなく、解釈や適用も施設・国ごとにさまざまで統一した見解にはいたっておらず、依然として大きな課題であるCVMsのタイプにより出血リスクはさまざまで、一方治療(塞栓術、切除術、放射線)にも無視できない合併症リスクが存在する。VASCERN-HHTは、成人及び小児のCVMs screeningに対する現在の考えをPosition Statementとして発表する。

定義:
1 Screening (Table1)
スクリーニングとは、将来の健康障害のリスクを低減し、またリスクが変えられない場合でも重要な情報を本人に提供することを目的として、当該疾患に関し本人が問題なしと考えている個人に対し介入すること。有症状者に行う検査ではない。無症状の個人に対するscreeningは、詳細なリスクとベネフィットの検討により、無症候病変の発見と治療が患者の健康全体に有益であることが期待できる場合にのみ考慮される。そのためには、カウンセリング上の問題、無症候病変の重大さ、検査の安全性と負担、治療の安全性と効果、よりよい管理がもたらす潜在的利益あるいは弊害(ライフスタイルや保険等への影響)に注視しなければならない。

2 General cerebral screening concepts in HHT(脳病変screeningの一般的考え方)

・病変(+):病変の存在は、将来の合併症発症や予防可能性の直接的情報ではない。積極的にscreeningを行ってきた国からのHHT関連CVMs screeningの有用性を示す報告は乏しく、一般住民のデータを参考にせざるを得ない。

・病変(-):その検査下の病変がないことを意味し、方法論的、時期的な制約がある。将来の新規病変を否定しない。

3 Cerebral vascular abnormalities(脳血管奇形の分類)(Table2):

1Malformations(血管奇形)

1Cerebralarteriovenous malformations (AVM):high flow CVMs with AV shunting

Nidal AVMs:主な成人CAVMのタイプ。新生児では見えず、幼児でも極めて稀。

Arteriovenous fistulae (AVF, non-nidal AVM):高い出血率。新生児から存在し小児で脳出血が多い原因と考えられている。

2Capillarymalformations (telangiectases):non-shunting low flow CVMs

 偶然見つかることが多く出血リスクはほとんどない。AVMではない。一部の論文ではmicro AVMとしてAVMに含められ、AVMの頻度上昇や出血率低下の要因となっている。「Micro AVM」は切除術のしやすさから命名された1㎝以下のAVMの呼称である。

3Cavernousmalformation (Cavernomas): non-shunting low-pressure angiographically occult lesions, composed of blood-filled sinusoidal locules. 出血率<0.6/

4Developmentalvenous anomalies (DVA): non-shunting congenital variants of the cerebral venous drainage composed of dilated centripetally and radially oriented draining medullary veins and merge into a single collecting transcerebral vein. 良性で無症候性。AVMのカテゴリーに含めた研究もあり。

2Aneurysms(動脈瘤): 一般住民の頻度(4-6%)と同程度でありおそらくHHT関連ではない。一般同様にHHT患者の脳出血の一定割合を占める。全てのHHT患者の脳出血がHHT関連血管病変が原因というわけではない。


頻度や出血率には、1)screeningの対象が全員かあるいは有症状者が含まれやすいかどうか、2)capillary telangiectasesDVAAVMに含めているかどうか、が影響する。


Proposed Position Statements(基本方針)(Table 2,3)

1 HHT患者が脳AVMを示唆する症状(頭痛、局所神経欠損、痙攣等)を有する場合は、一般と同様に精査すべきである。これはscreeningの議論とは区別すべきである。病変の取り扱いは、case by caseで専門家の判断とリスクベネフィットの評価に委ねる。

HHT関連CVMsは様々な出血リスクと病変部位・サイズに応じた症状を来す(AVMs50%が頭痛・局所神経欠損・痙攣などの症状を呈する)

・症状の原因としてCVMsを疑わない場合でも、脳画像検査を行う際には、病変が見つかった時に備えてスクリーニングに伴う問題について患者が概略を理解することは重要である。

・偶然見つかったAVMの対処は、症例ごとに治療のリスクベネフィットに関する専門家の判断に委ねる。病変の出血リスクが1-2%/年で、患者が若く治療リスクが低い(4-5%程度)場合は、治療が考慮されるかもしれない。

2  最近のエビデンスは未破裂の脳AVMsの治療を支持しない。従って無症状のHHT患者へ広く一律にscreeningすることには賛同しない。

・新生児のAVFgiant aneurysmsは出血リスク高い(別項で述べる)

nidal AVMAVFより出血リスクは低くおそよ2/年。破裂後1年は10%と上昇、その後未破裂AVMと同等になる。

・治療リスクは無視できない。ARUBA trial (a randomizedtrial of unruptured brain AVM therapy, with and without an interventionaltreatment)では治療群(外科的切除、塞栓術、放射線)の予後が3倍の悪く、評価委員会により治験は早期に中断された(観察期間33ヶ月、死亡と症候性脳卒中の複合主要エンドポイント発生率は治療群31%、無治療群10%)。このtrialは方法論的問題のため多くの批判があり、結論は一部のAVM、治療、対象でのみ正当化される。塞栓術では、少数でしか完全閉塞が得られなかったことが結果に影響した。HHT患者の割合も不明である。一般的にはCAVMs2%程度がHHTと推定されている。従って、ARUBA trialの結果をHHT患者に適用するのは妥当ではない。しかし、HHT関連AVMの出血・治療リスクが一般より高いという明確なデータもない。

VASCERN HHT8施設中、ルーチンに無症状者の脳MRIが行われているのは1施設のみ。また、家族歴に応じて正式な検査前カウンセリングプロトコールを設定している施設もある。この施設では、603名に検査前カウンセリングを行い11.3%がscreening MRIを受けた(脳出血の家族歴あり68.8%、なし4.9%)。

3 個人的、宗教的、臨床的状態を含む患者の立場を幅広く考慮すべきである。患者が納得した選択ができるよう、また矛盾したアドバイス(特に神経血管でないエビデンスの解釈による)による混乱を避けるために、全てのHHT患者は脳病変のスクリーニングについて主治医と議論する機会を持つべきである。

screening後の治療がリスクを低減するというエビデンスは乏しいが、リスク低減に関わらず本人にとって価値ある情報が得られることはscreeningの目的になりうる。

screening検査で陰性であることは生涯の安心を保障するものでない。

screening検査が陽性であれば、将来予測、治療プログラムの期間や限界についての情報に関して、困難な問題に直面することになる。すでに脳出血の既往があり再出血リスクが高い場合は、ライフスタイルの変更が求められる。

・有症状患者を除いたHHTCAVMs合併率は比較的低いかもしれないが、他の陽性所見(動脈瘤や脳病変)の割合は一般と同率か、あるいは肺AVMがあればより高率であることが予測される。

・患者の不安は、検査前情報や他の患者との交流により左右される。(ARUBA trialの結果を伝えた場合、screening検査受診率は予想に反して上昇した。AVMが見つかることで得られる安心感は、患者がより深刻な病変を除外しうる検査を求めているときには、screeningを受ける動機になると解釈できる) 

・脳出血の家族歴のある患者はない患者に比べ14倍の受診率であった。

HHT2よりHHT1の方がscreeningを受ける傾向が見られる。

4 無症状患者に対するscreeningの議論する際は、予防的・治療的介入の効果に関する最新のエビデンスについて検査前に情報提供することをまず優先すべきである。その後の人生に何も起こらない血管奇形を発見し治療することによる弊害の可能性について明確に述べられるべきである。

HHT患者の全CVMsの出血性合併症リスクは極めて低く、1%/年未満と推定される。一般よりCAVMs合併率が高かったとしても、HHTの未破裂AVMsの破裂リスクは低いかもしれない。AVMsのみの出血リスクであれば、一般と同等の2%/年程度と推測される。


Paediatric considerations by VASCERN HHTFig1)(小児の問題)

・出血リスクの高いCVMsは新生児に認められる(AVF or giant aneurysms)。

・新生児期の論文はほとんどなく、risk評価のために更なる研究が必要。

・この提言は小児にも適応できるが、実臨床での対応は施設により様々である。

・注目すべきは、いくつかのHHT centerでは、出生前スクリーニングにCAVMsの超音波検査を加えたり、周産期に経泉門エコーを行っている実態がある。

MRを行う場合、生後3ヶ月までなら”feed and wrap”を用い(食事を与え、おくるみでくるみ、自然な睡眠を促し撮像を行う)、麻酔を回避する。


結論:

・HHT関連脳AVMsの自然歴に関する研究が乏しい中、患者がスクリーニングに対して正しい選択ができるようにするためには正確な最新の情報を伝えることが重要。

・コンセンサスステートメントを作成するにあたり、1)これまで大雑把にAVMとされてきた脳血管奇形を区別する事、2)専門家による明確な指導に従う事を重視した。

・最もリスクの高いのは巨大動脈瘤とHigh-flow動静脈ろうで、新生児に高頻度に見られる(生存率が低いため)。これらは新生児期早期や出産直前に頭部超音波検査で観察しうる。

・脳AVMsは成人HHTでしばしば見つかるが、出血リスクは低いため無症状の成人HHTへのスクリーニングは推奨しない。もし偶然見つかった場合は、一般の場合と同様に、治療リスクは低ければ(5-6%以下)専門家の判断を踏まえて治療を行うことは有用である。なぜなら出血リスクは2-3/年と決して低くはない。

・一方、脳動脈瘤の頻度は一般と同等である。小さく(7mm未満)偶発的に見つかったものであれば(大部分)破裂リスクは低く、スクリーニングや治療は推奨しない。

・このステートメントは3-5年後に新しい研究結果を踏まえて更新される。


患者さんへ:これは、VASCERNというヨーロッパのHHT専門施設ネットワークがまとめた「成人と小児HHT患者の脳病変スクリーニング」に関する基本的見解です。HHT患者さんの脳病変にはいくつか種類があり、その自然経過はまだよくわかっていません。またそのスクリーニングの是非や方法も国によって様々です。その限られた情報の中で、現在分かっていること分かっていないことを整理し、現時点での彼らの考えを表明しています。


成人及び小児HHT患者の脳スクリーニング検査に関するVASCERNの基本方針表明_a0385263_17135718.png
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# by shijimi5512 | 2021-01-27 21:17 | Clinical(患者メッセージあり)
論文:Safety of direct oral anticoagulants in patients with hereditary hemorrhagic
telangiectasia.
Orphanet Journal of Rare Diseases (2019) 14:210. doi.org/10.1186/s13023-019-1179-1

目的:心房細動や深部静脈血栓症に対し通常抗凝固療法が行われるが、出血性合併症を有するHHT患者におけるその安全性は重要な課題である。これまでワーファリンとヘパリンの安全性についての報告があるが、本研究では近年主流となっている直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の安全性について検討した。

方法:後ろ向き研究
 ・ VASCERN(the European Reference Network for Rare Multisystemic Vascular Diseases)に参加する8施設(Denmark, France, Germany, Italy, the Netherlands and UK)
 ・鼻出血の経過を4タイプ分類(改善、不変、悪化するも継続、悪化による投薬中止)

結果:HHT患者28名に対し行われた抗凝固療法32治療の検討。平均年齢65歳(30-83歳)、適応は心房細動16、静脈血栓症16治療。使用薬剤はアピキサバン15、リバロキサバン14、ダビガトラン3治療。
 ・32治療のうち、24治療で鼻出血が増悪し(75%)、11治療で投薬中止となった(34.4%)
 ・鼻出血増悪による投薬中止率は、アピキサバン4/15(26.7%)、リバロキサバン7/14(50%)、ダビガトラン0/3
 ・リバロキサバンによる出血リスクは、性別、適応、年齢で補正してもアピキサバンより有意に高率であった。
 ・これまでに経験したことのないような重症鼻出血(数時間持続し入院したり輸血など薬剤の中止を余儀なくされる)をきたした割合は、リバロキサバン5/14(35.7%)、アピキサバン3/15(20%)。一方、従来の報告ではワーファリン4.7%であった。
 ・鼻出血増悪のためにDOAC投与中止となった11ケースには、他のDOACやワーファリンに切り替え可能であったケースや不可であったケース、あるいは投与中止後しばらくしてから再開可能であったケース、投与そのものを中止したケース、また心房細動例では投与中止後に左心耳閉鎖術が行われたケースがあった。

結語:現時点では、HHT患者の抗凝固療法にはワーファリンがファーストチョイスである。DOACが検討される場合、リバロキサバンよりアピキサバンの方が出血リスクは低いかもしれない。少ない症例数のためエビデンスレベルは低く、今後のさらなる検討が必要である。

臨床的意義:HHT患者では出血リスクのため必要な抗凝固療法(ワーファリンやヘパリン)が行われていないケースがあり、専門家パネルは必要に応じた耳鼻咽喉科的加療により抗凝固療法は適切に行うことができることを推奨してきた。非HHT患者における抗凝固療法は、近年その有効性と出血リスクの低減を背景にDOACが中心となっているが、HHT患者におけるエビデンスは皆無である。本研究はVASCERN参加8施設で行われたが、症例数が極めて少なく後ろ向き研究であるため断定的な事は言えない。ダビガトランは3例のみ、エドキサバンの使用例はないリバロキサバンに比べるとアピキサバンの方が重症出血が少ないという結果であるが、それでも73%が鼻出血悪化し2割は中止に至っている。一方、引用されたワーファリンの研究(n=64)でも61%が悪化し5%が中止である。一般的に抗凝固療法は有効性と出血リスクの兼ね合いで適応が決定される。非HHT患者でのDOACの最大のメリットはワーファリンより重大出血(特に脳出血、消化管出血)が少ないことであるが、HHT患者ではその前提が成り立たない。また、重大出血を来した場合、ダビガトラン以外は拮抗薬がないことも問題である。HHT患者における抗凝固療法は、脳・肺・消化管病変の有無や貧血の程度を評価し、さらに鼻出血については耳鼻咽喉科医との緊密な連携の上で拮抗薬があり薬効をモニターできるワーファリンで行うのが望ましい。また、心房細動に関しては日本でも既に一部の施設において経カテーテル左心耳閉鎖術(WATCHMAN)が行われており、抗凝固療法が困難なケースへの治療として期待される。HHT診療に関わる医師には、心房細動リスクに対する介入も求められる。HHT側の要因として肝臓血管奇形が知られており、特にBNP上昇例には塩分制限の徹底が必要であり、また生活習慣病など介入可能な要因についても注目する必要がある。さらに、鉄欠乏自体が易血栓性を来すため、貧血の有無に関わらず鉄欠乏の是正も重要である。

患者さんへ:足の奥の方にある静脈に血栓(血の塊)ができると、それが遊離して肺の血管につまり突然の呼吸困難やショックを来し、時に命が危険にもなるいわゆるエコノミークラス症候群の原因になります。またオスラー病で肺動静脈奇形があると血栓が肺血管をすり抜けて動脈側に移行し脳梗塞等の原因になることがあります。このような体の深い静脈にできる血栓が原因で生じる病気を静脈血栓症といいます。また、心房細動という不整脈では心臓の中に血栓が形成され、それが心臓から遊離して血流に乗って全身に飛び、脳梗塞等の原因になることがあります。これら静脈血栓症や心房細動の患者さんには、薬で血を固まりにくくする治療(抗凝固療法)が行われています。この治療にはこれまでワーファリンという薬が使用されていましたが、数年前より新しい機序の薬剤(DOAC)が使用されるようになり、現在はDOACがこの治療の中心的薬剤となっています。そのメリットは、有効性はワーファリンと同等かやや上回り、一方重大出血の副作用はワーファリンより少ないことです。抗凝固療法には出血リスクが常に付きまとうため、患者さんの血栓の出来やすさと出血しやすさを様々な観点から検討して治療の適応を決めることが重要と考えられています。
 HHTは鼻出血、消化管出血、脳出血等、疾患から生じる出血が主病態の一つであるため、抗凝固療法を行う際にはより出血リスクの少ないDOACに期待するわけですが、本研究の結果はその期待を裏切るものでした。重症出血の頻度はDOACの種類にもよりますが、20~35%の患者がこれまでに経験したことのないような鼻出血が生じ治療継続が困難でした。ワーファリンを用いた過去の研究では約5%であったことを考えると、現時点では抗凝固療法はワーファリンで行うことが望ましいと結論づけられ、新しいガイドラインにもそのように述べられています。ワーファリンは常に安全かというとそうでもなく、多くは鼻出血が増悪することが予想されます。しかし静脈血栓症や心房細動自体も重症合併症(脳梗塞、肺塞栓等)の原因となるため、必要な抗凝固療法であればこれを継続できる方法を主治医と相談しながら探っていくことが重要です。また、患者さんに特に意識していただきたいのは、心房細動は生活習慣の乱れを是正することで抑えることができることです。アルコール、肥満、高塩分食、喫煙、ストレス、睡眠不足などの改善と運動習慣、高血圧、糖尿病、腎臓病などの管理も重要となります。ご自分でできる対策は出来るだけ早い時期から取り組むことをお勧めします。
HHT患者における直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の安全性に関する検討_a0385263_17531001.png
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# by shijimi5512 | 2020-11-25 18:48 | Clinical(患者メッセージあり)
論文:Second International Guidelines for the Diagnosis and Management of HereditaryHemorrhagic Telangiectasia.
Ann Intern Med. doi:10.7326/M20-1443
患者さんへ:2020年9月発表されたHHT診療ガイドライン第2版です。2009年第一版発表から10年以上経過し、この間の世界中の研究結果を踏まえて内容も充実したものとなりました。また強調すべきは、ガイドライン作成委員会に患者や患者会も参加し、患者の声・価値観を重視し反映させたことです。日本からは小宮山先生が参加されました。
今回新たに設けられた項目は2356、一部変更・補足された項目は14、第一版と同じ項目は79となっています。

(閲覧上の注意)

 ✔この記述内容は正確な逐語訳ではなく、正式な「ガイドライン日本語版」ではありません。患者さんも読んで分かりやすいように文章と内容を整理しました。

 ✔第一版と同じく、内容に関しては日本の医療現場では適応されないものも含まれています。ガイドラインは絶対的なものでなく、中には委員の8割しか合意に至らないものもあり、国や居住地区、医療環境、HHT病変の特徴や他の併存疾患の状況、患者の価値観、主治医の考え等により柔軟に運用すべきものです。


1 鼻出血

A1:粘膜の湿潤を保つため、鼻腔を加湿する治療を行う(局所への1日2回生食投与)

A2:上記で効果が少ない場合、トラネキサム酸(トランサミン)経口投与

A3:上記で効果が少ない場合、鼻粘膜焼灼術(レーザー、ラジオ波、電気、硬化療法)

  ・一時的効果が期待できるが、鼻中隔穿孔のリスクを伴う

A4A1~3で効果が少ない場合、抗血管新生療法(全身)を行う(ベバシツマブ静注)

A5A1~3で効果が少ない場合、鼻中隔皮膚形成術を行う

A6A1~3で効果が少ない場合、鼻腔閉鎖術を行う

A4~6は、生命の危険を伴うような鼻出血の場合に治療の有害性と有益性を考慮し判断

A7:出血予防のために鼻腔の湿潤を保つことを患者に勧める

A8:患者が鼻出血治療を希望する場合、HHT専門の耳鼻科医を紹介

A9:患者が鼻出血以外で鼻腔手術を検討している場合、HHT専門の耳鼻科医に相談

A10:急性出血の治療には、除去時に再出血の少ない鼻腔内充填物の使用を検討する(潤滑低空気圧パッキング)


2 消化管出血

B1:出血が疑われる場合、初期検査として上部消化管内視鏡検査を推奨する。大腸がんのスクリーニング検査を要する患者やSMAD4-HHTの患者は大腸内視鏡検査も行うべきである。

  ・検査中の予期せぬトラブル(鼻出血等)への対応を考慮し、経験豊富なセンターでの検査を検討する。また、肺AVM合併例には必要な予防措置に留意すべきである。

  ・ SMAD4-HHT15歳より下部消化管内視鏡による大腸スクリーニング検査を推奨。ポリープがなければ3年ごと、あれば上部消化管内視鏡とともに毎年。

B2:出血が疑われるが、上部消化管内視鏡検査で有意な血管拡張病変を認めない場合や鼻出血で説明できない貧血を有する場合は、カプセル内視鏡を検討する

B3:消化管出血の重症度分類(少なくとも3ヶ月の経過で判断)。血色素の目標は、患者の身体的ニーズにより個別に判断する。

  ・ 軽症〜経口鉄剤で血色素が保たれる

  ・ 中等症〜静注鉄剤で血色素が保たれる

  ・重症〜鉄剤で血色素が保たれず、輸血を要する

B4:アルゴンプラズマ凝固による内視鏡的治療は、内視鏡検査中に控えめに行う


3 貧血と抗凝固療法

C1:全ての成人(症状の有無に関わらず)及び反復性出血あるいは症状のある小児に対し、貧血と鉄欠乏の検査(フェリチン、血清鉄、TIBCTSAT)を推奨

C2:鉄欠乏と貧血に対し、鉄補充療法を行う

  ・初期治療は経口投与

  ・経口投与が無効、吸収不良、内服不能例や重症貧血例では静注

C3:赤血球輸血療法〜血色素の目標値は、症状、出血の程度、他の治療や鉄剤の反応性、併存疾患の状態に基づき、個別に設定する

  ・血行動態不安定例やショック例

  ・より高い血色素を維持する必要がある併存症を有する例

  ・術前や妊娠中など速やかに血色素を保つ必要のある例

  ・頻回の鉄剤静注にも関わらず十分な血色素を維持できない例

C4:鉄剤投与による改善が不十分である場合、他の原因精査を行う

  ・葉酸、VB12MCVTSH、血液像、溶血、網状赤血球数

  ・必要あれば血液内科に相談

C5:予防あるいは治療を目的とした抗凝固療法や抗血小板療法は、薬剤投与の適応があり出血リスクを十分考慮した上で容認される(HHTの出血はこれら薬剤の禁忌ではない)

  ・未分画ヘパリン、低分子ヘパリン、VK拮抗薬がDOACより望ましい

  ・心房細動例で抗凝固療法が困難であれば左心耳閉鎖術を考慮する

C6:抗血小板剤2剤併用及び抗血小板剤と抗凝固薬の併用は可能であれば避ける

  ・必要な場合でも可能な限り短期間にとどめ厳重なモニターを行う

  ・出血病変の最初の精査の際や非出血性の大きい病変(1~3mm)に対して行う

  ・医原性の粘膜損傷を避けるため、繰り返す処置は極力控える

B5:軽度の消化管出血には抗線溶療法(トラネキサム酸)を検討する

B6:中等症〜重症の出血にはベバシツマブ静注か他の抗血管新生療法を検討


4 肝血管奇形(肝VMs

D1HHT確診と疑いの成人に対し、肝VMsのスクリーニングを推奨

  ・ドップラーエコーによる重症度分類は予後予測に有用

  ・肝VMs1/3に非黄疸性の胆汁うっ滞を認め、重症度と関連するとの報告あり

  ・肝VMsを確認することは、診断的意義とより良い患者管理の面から推奨される

  ・ドップラーエコーは正確性・簡便性・安全性・低コストの面から初回検査として望ましいが、地域や施設の実情、患者の希望に応じて他の検査も検討する

D2:症候性や複雑な肝VMs病変を疑う例に対し、以下の診断的検査を推奨

  ・症候性〜心不全、肺高血圧、心バイオマーカー異常、肝機能異常、腹痛、門脈圧亢進症、脳症

・検査~ドップラーエコー、multiphase 造影CT、造影MRI(腎機能低下には造影は避ける)

・検査法はリスク・ベネフィット、専門家の有無、利便性、コストを考慮し決定する

・心エコーは肝VMsの血行動態的影響の評価に有用

D3:血管奇形のタイプに応じた基本的管理・治療の強化は、症候性や複雑な肝VMs病変を疑う例に対してのみ推奨。高拍出性心不全や肺高血圧症を有する患者は、HHT専門施設、HHT専門循環器医、肺高血圧症専門施設において、両病態の管理を行うことを推奨。

  ・症候性肝VMsを有する例は、最低年1回はHHT専門施設で管理

D4:厳重な管理を要する患者の同定には、利用可能な臨床的因子による予後予測を用いる。それに応じてフォローアップ計画を立てることを推奨。

D5:基本的管理・治療で十分な効果が見られない症候性高拍出性心不全に対しベバシツマブ静注を検討する

  ・重症肝VMs(特に心不全)の8割に改善が見られたとの報告

  ・副作用~50/100人年。高血圧、蛋白尿、創傷治癒遅延、感染、静脈血栓症、重篤な副作用の報告もあり。妊婦には禁忌、長期投与のリスクは不明。

D6:治療抵抗性の高拍出性心不全、胆道虚血、複雑な門脈圧亢進症のような合併症を呈する重症肝VMsに対し、肝移植の検討を相談する

  ・肝移植~良好な510年生存率(82%~92%)、遅発性の再発はあるが稀で無症候性

  ・移植リスト登録の判断は、予後因子と肝VMs合併症の程度(特に肺高血圧症)に基づく。

・肺高血圧症存在下での肝移植は、肺血管抵抗3Woods Units以下の場合に行われる。

D7HHT確診および疑い例には、肝生検を避ける

D8:肝動脈塞栓術は一時的な効果しかなく、重篤な合併症や高い死亡率のため避ける


5 小児のケア

E1HHT患者の無症状の子供に対して、遺伝子検査を提案することを推奨

・子供の検査の前に、原因遺伝子を同定するためにまずHHTの親の遺伝子検査をすべき

・検査の有益性、代替案、長所・短所について子供や両親と協議すべき

E2:無症状の小児HHT患者やHHTの可能性のある小児は、HHT診断時あるいは症状出現時に肺AVMのスクリーニングを推奨

  ・成人と同等の頻度、重篤な合併症リスク、良好な塞栓術成績が報告されている

  ・スクリーニング検査~1)胸部X線と酸素飽和度、2)生食攪拌コントラスト心エコー

  ・スクリーニング検査陽性はCTで確定診断するが、CTによるスクリーニングは推奨しない

E3:大きな肺AVMや低酸素例では、重症合併症を避けるために治療を推奨

  ・小児でも塞栓術は安全で有効

  ・流入動脈径が3mm以上の肺AVMは塞栓術に適している

  ・治療後の再灌流・再疎通や小病変の拡大を検出するために経過観察を要する。検査の間隔や方法は施設により様々である(CT、酸素飽和度、コントラスト心エコー)。

E4:無症状の小児HHT患者やHHTの可能性のある小児には、5年ごとの肺AVMスクリーニング検査を繰り返すことを推奨

  ・最初のスクリーニングで陰性でも5年ごとに行う

  ・境界の判定では、検査間隔を短くすべき

E5:無症状の小児HHT患者やHHTの可能性のある小児には、診断時あるいは症状出現時に脳VMのスクリーニングを推奨

  ・脳VMsの同定、タイプ分類、出血リスクの判定のため、スクリーニング検査にはMRIを推奨(造影MRIはより高感度)。乳幼児では鎮静・麻酔が必要

  ・治療するか経過観察とするかは、出血リスクと治療リスクを検討し決定

  ・小児のスクリーニングは、医師・保護者・子供本人(可能なら)が十分協議して決定されるべきであり、国によっても対応は異なっている(無症状の乳児にもMRIをする国や無症状小児にはルーチン検査は行わない国)

  ・患者代表は、未検査患者の悲劇的結末の体験から、小児スクリーニングの必要性を強調している

E6:高リスクの特徴を有する脳VMは治療を推奨

  ・出血リスクの特徴、外科手術・血管内治療の有用性と治療リスクの報告

  ・脳VMs合併小児は、両リスクの判断のため専門施設への紹介を推奨

  ・治療後脳VMsは厳密なフォローを要するが、未治療の微小病変のフォローについて定まったものはない。


6  妊娠、出産

F1:将来の妊娠や出生前診断(着床前遺伝子診断を含む)について患者と相談する

  ・一度家系の原因遺伝子が同定されれば、将来の子孫のスクリーニングが可能となる

  ・利用可能な検査や対応は国によりさまざまであり、法令によって影響される

F2:脳VMsを疑う症状を有する妊娠患者に対し非造影MRI検査を推奨

  ・脳出血の既往を含む症候性の患者は、妊娠第二期に検査すべきである

  ・無症状の患者には、妊娠中のルーチンのスクリーニングは推奨しない

F3:最近、肺AVMのスクリーニング検査や治療をしていない妊娠患者に対し、以下のように対応することを推奨

  ・無症状~施設の実情に応じて、コントラスト心エコーか低線量非造影CTを用いて検査を行う。CTの場合は、妊娠中期始めに行う。

  ・有症状~低線量非造影CTを用いた診断的検査を、適応があればどの妊娠周期でも行う

  ・肺AVMの治療は、他に臨床的適応がなければ妊娠中期に始める。

妊娠中は肺AVMの合併症リスクが高くなる。妊娠中期の放射線イメージングや塞栓術は低リスクであるが、胎児の被爆を低減する様々な手段を講じるべきである(腹部・骨盤のX線透視の回避、パルスあるいは低線量透視、最低限のアンギオ、tight collimation)。CTとアンギオの際の腹部シールドは有用でない。

F4: 未治療の肺AVMや脳VMsを有する場合や最近肺AVMのスクリーニングを行っていない場合は、出血や脳神経合併症のハイリスク妊娠と考えるべきであり、三次医療機関の多領域専門チームで管理することを推奨

F5HHTの診断を理由に硬膜外麻酔を控えることがないよう勧める。また、脊髄VMsのスクリーニングは必要としない。

  ・妊娠後期始めに、麻酔のオプションについて麻酔科医と相談すべきである

  ・脊髄VMsの硬膜外麻酔リスクは立証されておらず、理論上のものである

F6:ハイリスクでない脳VMsを有する患者は、経腟分娩が可能である。患者によっては、分娩二期の補助が必要となるかもしれない。

  ・脳出血の既往のない場合、分娩方法は産科的適応や医師・助産師との協議に基づいて決められるかもしれない。経腟分娩は禁忌ではない。

  ・ハイリスク病変の場合は、帝王切開や硬膜外麻酔を用いた無痛分娩を検討すべきである。後者の場合、分娩時の児頭先端部の受動的下降がスムーズに進行するよう分娩第二期の補助を考慮する。厳重な血圧管理は必須で、脳神経血管専門チームの意見を得るのが賢明である。


7 診断

G1HHTの診断は、Curacao 診断基準あるいは原因遺伝子変異の同定で行う

G2Curacao 診断基準の一つ以上の項目を有する場合、HHT診断を考慮する

G3HHT患者の無症状の子供は、遺伝子診断で否定されない限りHHT疑いと考える

G4:以下の理由で、遺伝子検査のために患者を紹介する

  ・臨床的にHHTが確定した家系の原因遺伝子を同定するため

  ・原因遺伝子の明らかな患者の血縁者の診断を行うため

 (無症状あるいは症状の軽微な人、出産前検査を希望する人)

  ・診断基準を満たさない個人の診断を確実にすることの補助のため

G5ENGACVRL1遺伝子検査が陰性の人には、SMAD4遺伝子変異の検査が考慮されるべきである


8 脳血管奇形(脳VMs

H1HHT確診あるいは疑いの成人患者は、MRIによる脳VMsスクリーニング検査を推奨

・感度を上げるため、造影と非造影MRIのプロトコールや血液成分を検出する撮像sequenceを用いる

H2:脳VMsによる急性出血の成人患者は、脳神経血管専門医のいるセンターでの確実な治療を考慮する

H3:脳VMsを有する全ての成人患者は、侵襲的検査と個別管理のために脳神経血管専門医のいるセンターに紹介する

H4HHT確診あるいは疑いの妊娠患者が無症候性脳VMsを潜在的に有する場合、脳VMsの確実な治療を出産後に延期することを推奨する


9 肺動静脈奇形(肺AVM

I1HHT確診あるいは疑い患者の全てに、肺AVMのスクリーニングを行う

I2:肺AVMの最初のスクリーニング検査に経胸壁コントラスト心エコーを推奨

I3:肺AVMの治療にはカテーテル塞栓術を推奨

I4:治療の有無に関わらず、肺AVMを有する患者には長期にわたり以下のアドバイスを行う

  ・菌血症のリスクを伴う処置の際は予防的に抗生剤を投与する

  ・静脈ラインを使用の際は、空気の混入を避けるため細心の注意を払う

  ・スキューバダイビングを避ける

I5:肺AVMを有する患者に対して、未治療AVMの成長や治療後再潅流を検出するために、長期的にフォローアップを行う


# by shijimi5512 | 2020-10-12 19:13 | Clinical(患者メッセージあり)

HHT治療の展望

論文:Future treatments for hereditary hemorrhagic telangiectasia

(Robert et al. Orphanet J Rare Dis. 2020 Jan 7;15(1):4. doi: 10.1186/s13023-019-1281-4.)

The recent therapeutic treatments for HHT are intended to reduce the symptoms of the disease.

No mechanism-based targeted therapy is available so far.

This review focuses on the development of new drugs aiming at correcting the altered signaling pathways in HHT patients.

drugs that target VEGF and the angiogenic pathway

repositioned drugs identified by high throughput screening strategies (new molecular targets: FKBP12, PI3-kinase and Angiopoietin-2)


1. Genetic and mechanistic presentation of HHT (Fig.3, 4)

ALK1 expression is restricted to the vascular and lymphatic endothelia.

Endoglin is also an endothelial-specific receptor for BMPs which is devoid of intracellular kinase activity and acts as a co-receptor in complex with ALK1.

Ligand: homodimeric BMP9 (liver) and BMP10 (right cardiac aria), BMP9-BMP10 heterodimer

BMP type II receptor: BMPRII or ACTRIIA or ACTRIIB

HHT is now considered as a disease of the BMP9/10 pathway rather than a disease of the TGFß pathway.

About 550 pathogenic mutations of ACVRL1 and 490 pathogenic mutations of ENG have been reported in humans. (Fig.1, 2. ARUP, http://arup.utah.edu/database/hht/)

・ACVRL1 mutations: The mutants were expressed at the cell surface but were unable to activate Smad1/5/9 phosphorylation and BMP-responsive reporter gene expression. None of these mutants was able to act a dominant-negative repressor of wild-type receptor activity. These indicate that HHT2 mutations trigger functional haploinsufficiency of BMP9 signaling.

・ENG mutations: induce protein loss-of-function through distinct mechanisms. Some mutants are unable to reach the plasma membrane during their biosynthesis and remain retained intracellularly. When retained in the endoplasmic reticulum, some mutants can dimerize with wild-type endoglin and impair its cell surface expression, acting as dominant-negative receptors, while other mutants cannot. Some mutants get normally expressed at the cell surface, but are inactive and unable to bind BMP9.

Second local hit: local injury, increased tissue perfusion provoked by a local VEGF, somatic genetic mutation

BMP9/10: Smad and non-Smad signaling via p38 MAP Kinase, ERK or JNK

ALK1 can also cross-talk with the VEGF, angiopoietin 2, Notch and Hippo pathways.

BMP9: 1) activates the endothelial cellexpression of VEGFR1 (a decoy receptor for VEGF)

2) represses the endothelial expression of ANGPT2 (pro-angiogenic)

3) down-regulates both the expression and the phosphorylation of PTEN, leading to increased PTEN activity and decreased activity of PI3K and AKT


2. Future treatments for HHT (Fig. 5)

1) Anti-angiogenic therapies using Bevacizumab: refractory bleeding, symptomatic HVMs, HOCF

2) Anti-angiogenic therapies using tyrosine-kinase inhibitors (TKI): Sorafenib, Nintedanib (multicenter RCT in France), Sunitinib (case report), Pazopanib (One study was stopped. Two studies are planned.)

3) Anti-angiogenic therapies using anti-Ang-2 antibodies and PI3 kinase inhibitors: Buparlisib(case report)

4) Reactivating the altered BMP signaling

Tacrolimus (FK506): case report (oral low-dose), multicenter RCT (nasal ointment, phase II)

displaces FKBP12 from ALK1, ALK2 as well as ALK3 and stimulates their kinase activity (Fig.6)

(FKBP12: FK-506-binding protein-12 represses the receptors’ kinase activity in the absence of their ligands)

stimulates endoglin and ALK-1 expression by endothelial cells

Sirolimus: case report

binds FKBP12 and inhibits mTOR, which is downstream of PI3K and AKT

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Fig.1 ENG


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Fig.2 ACVRL1


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Fig.3


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Fig. 4 BMP9 and BMP10 induce vascular quiescence by various mechanisms. Through ALK1 phosphorylation of Smad1/5/9, BMP9 or BMP10 triggers transcriptional effects that induce vascular quiescence, including repression of ANGPT2 (angiopoietin 2) and induction of VEGFR1 expressions. In parallel, BMP9 inhibits the phosphorylation of the phosphatase PTEN (which is active in its unphosphorylated form), thereby inhibiting the activity of PI3K, a downstream effector of both VEGF and ANGPT2. ANGPT2 signaling is complex: when ANGPT1 (angiopoietin 1) is present, ANGPT2 acts as an antagonist of ANGPT1 and prevents the phosphorylation of the Tie2 receptor and the activation of PI3K. When ANGPT2 is present in large excess over ANGPT1, it acts as an agonist of the Tie2 receptor and stimulates PI3 Kinase. Tie2 activation is pro- angiogenic. VEGF activates different signaling pathways (PI3K/AKT, PLCγ/ERK, src/p38MAPK) which trigger a variety of biological responses (EC (endothelial cell) survival, permeability, proliferation and migration). VEGFR1, whose expression is increased by BMP9, acts as a decoy VEGF receptor, thereby shutting down the pro-angiogenic VEGF signaling mediated by VEGFR2Altogether, BMP9 and BMP10 maintain vascular quiescence by shutting down the pro-angiogenic VEGF and ANGPT2 signaling pathways.


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Fig. 5 Future treatments for HHT. The HHT-causing mutations of genes encoding components of the BMP9/BMP10 signaling pathway (indicated by red asterisks), result in decreased downstream signaling (indicated by thinner arrows than in Fig. 2) and increased activity of the VEGF and ANGPT2 signaling pathways (indicated by thicker arrows than in Fig. 2). Several drugs that target these pathways are already in use in clinical trials (blue boxes) or under evaluation in preclinical studies (parma boxes) for HHT treatment. Currently evaluated HHT treatments target VEGF via anti-VEGF antibodies (bevacizumab) or VEGFR2 tyrosine kinase inhibitors (VEGFR2-TKI such as pazopanib). Tacrolimus and sirolimus were identified through recent high-throughput screening of FDA-approved drugs as activators of ALK1 (and ALK3) signaling. They are under phase I/II trials as clinical treatments for HHT. Preclinical studies are investigating the beneficial effects of anti-ANGPT2 antibodies (LC-10) and PI3-kinase inhibitors (wortmannin or LY294002). As shown on this cartoon, all these treatments aim at restoring the balance between the BMP9 pathway and the VEGF/ANGPT2 pathways in order to re-establish vascular quiescence

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Fig.6 Proposed model of activation of BMPR2 in the presence of a subactivating dose of BMPs and an activating dose of BMPs and mutated or dysfunctional BMPR2 receptor with an activating dose of BMPs or with a subactivating dose of BMPs and FK506. J Clin Invest. 2013;123(8):3600-3613.

# by shijimi5512 | 2020-09-11 23:22 | Basic

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